京大呼吸器外科 京都大学医学部附属病院呼吸器外科

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肺ガンとは

肺ガンという病気について

肺ガンとは、肺に発生するガンの総称です。人間の体は多くの臓器が生命の維持という一つの目標を持って共同作業を行なっており、臓器を構成する細胞は環境に対応して厳密に制御されています。体の中の種々の制御を無視して急激に増殖する能力を獲得したのがガン細胞です。しかもガン細胞は局所にとどまらず血流やリンパの流れに乗って全身をめぐり、行き着いた先でも同様に増殖します。これを転移といいます。ガンが怖いのは急激な増殖能力と転移能を兼ね備えていて、多臓器の機能不全を引き起こすからです。

 

肺ガンの頻度を見る場合、わが国では全国的なガン登録が未整備であるため、発生数は不正確で死亡数が用いられます。肺ガンは依然として予後不良な疾患であるため、死亡数は発生数に比例し、死亡数の1.1ないし1.2倍程度が発生数と考えられています。わが国の肺ガン死亡数は、1960年以降男女とも一貫して増加しており、男性では1993年に胃ガンを抜いて第1位となりました。その後も肺ガン死亡数は増加の一途をたどり2006年にはついに6万人の大台に乗りました。

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肺ガンの症状

初発病巣にしても転移巣にしても大きさとできる場所によって多種多様な症状を呈します。気管や気管支の内腔で発育する場合は小さな病巣でも咳・血痰といった無気肺や出血に起因する症状を呈することがあります。しかし病変が中枢部にあっても気道内腔に突出しない場合や末梢肺野に存在する場合には、かなり大きくなっても症状を呈さない場合もあります。抹消肺野の小さな病巣はほとんど症状を出すことは無いと考えられていますが不思議なことに多くの患者さんを診ているとそのような病巣を持つ患者さんでも咳や胸部,肩,背中の痛みを訴えられることがあります。このような痛みは,体動とは関係なく持続的で,咳をしたときに強くなるような性状であることが多いようです。特に思い当たることなくこのような症状のでた場合には念のため胸部X線写真を見てもらうと良いと思います。また重喫煙者で「せきやたんが多くなっていた」「痰に血が混ざった」などの症状が現れたら2〜3回程度繰り返し痰の中の細胞を調べてみることでガンを早期のうちに見つけることも可能です。

肺ガンが疑われたら

胸部X線写真で肺ガンが疑われたり、痰の中に怪しい細胞が検出されたら、さらに詳しく検査を進める必要があります。通常はCTFDG−PETなどの画像的な検査と、気管支鏡による観察・病巣よりの組織診断が行われます。京大病院呼吸器外科では週に一度呼吸器外科医全員と放射線科画像診断医が集まりその週の初診の患者さんや入院中の個々の患者さんの画像を検討しています。

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肺ガンの治療

肺ガンの治療戦略には手術療法・放射線療法・抗ガン剤療法があります。それぞれ守備範囲が異なりますが、協力して集学的に治療を行なう必要があります。治療戦略を立てる上で最も重要なのは病気の時期(病期)を知ることです。外科治療の対象となるのはほとんどが非小細胞肺ガンですからここでは非小細胞肺ガンの病期について説明します。非小細胞肺ガンの病期は初発病巣の進展度・リンパの流れに乗った進展度・血流に乗った多臓器への進展度で判断されそれぞれT・N・Mの記号で表されます。T因子にせよN因子にせよ組織学的にガンの存在が証明されて初めて正確な診断といえます。従って画像診断による判定(これを臨床病期と呼びます)よりも手術後の永久標本の検索に基づく決定(これを病理病期と呼びます)のほうがより正確に病期を判定できることになります。

呼吸器外科が肺ガン治療で分担するのは手術治療です。

病理病期 治療
IA期 手術(+化学療法)
IB期 手術(+化学療法)
II期 手術(+化学療法)
IIIA期 化学療法・放射線療法+手術
手術適応がなければ化学療法+放射線療法
IIIB期 化学療法・放射線療法
V期 化学療法及び緩和療法
再発例 化学療法及び緩和療法、一部手術

臨床病期 I 期或いは II 期と判断された場合は、手術療法が第一選択となります。手術療法では、通常ガンの存在する肺葉と当該肺葉からのリンパ流路に沿ったリンパ節の系統的な切除を行ないます。切除したリンパ節は病理検査に提出し、転移病巣がないかどうかを検索します。臨床病期と病理病期が異なることは、稀ではありません。当科では病理病期でIB期と判定された場合、標準的にはUFTという経口抗がん剤の内服を手術後2年間内服していただいています。術後にUFTを内服する術後補助化学療法は、2003年に第一版が出された肺ガン診療ガイドラインにおいて標準治療と記されています。この治療を標準治療と証明するのに京都大学呼吸器外科は大きな役割を果たしました。

近年の趨勢として病理病期 II 期に関しても術後補助化学療法が有効であろうと考えられるようになってきています。この場合の化学療法とは、1990年代に登場した新規抗ガン剤とプラチナ製剤の併用療法を指します。しかし現時点でもどの組み合わせが良いのかは今後の課題として挙げられます。京大病院では外来化学療法部と連絡を密にして術後補助化学療法の大半を外来で受けていただけるようにしています。

臨床病期 IIIA期は手術療法を第一選択にするべきではなく化学療法放射線療法を先に行なってから手術を受けていただくのがよりよい治療選択と考えられるようになっています。従って臨床病期をより正確に判断する必要があり、当科でも縦隔鏡検査超音波気管支鏡下生検を行なって制度を高める努力をしています。また、先行して行なう化学療法の薬剤選択や放射線療法の線量に関しては今後さらに検討を加える必要があります。
病理病期 II 期に対する補助化学療法に関する課題、臨床病期 IIIA期に対する手術前化学放射線療法に関する課題を進歩させるべく、京都大学呼吸器外科でも臨床試験を行なう準備を進めています。

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肺切除術について簡単に紹介します。左の図は肺の構造をシェーマとしたものです。

図に示すように、肺は、心臓から直接太い血管が出入りしています。水色の結節をガンの初発病巣、黄色の楕円をリンパ節と考えてください。先ほど、「手術療法では、通常ガンの存在する肺葉と当該肺葉からのリンパ流路に沿ったリンパ節の系統的な切除を行ないます。」と述べましたが、そのためには心臓から直接出入りする太い血管の枝を切る必要があります。リンパ節の腫れている場合は近接する太い血管から剥離する必要があります。また腫瘍のできる位置や、大きさによっても切除範囲や手術の難易度が異なってくることがお分かりいただけると思います。最近の内視鏡や手術器具の進歩は大きな皮膚切開をして肋骨の間を大きく開大して胸腔に手を入れなくても肺葉切除が行なえる胸腔鏡視下手術を可能としました。当科でも積極的に取り入れて行なっており術後疼痛が少なく早期の回復が得られています。

 
Grade Performance Status
0 全く問題なく活動できる
発病前と同じ日常生活が制限なく行なえる
1 肉体的に激しい活動は制限されるが,歩行可能で,軽作業や座っての作業は行なうことができる.
例:軽い家事,事務作業
2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない.日中の50%以上はベット外で過ごす
3 限られた自分の身の回りのことしかできない
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない.
自分の身の回りのことは全くできない
完全にベッドか椅子で過ごす

手術の適応を決定する上で、或いは手術術式を決定決定する上で病期が非常に重要なことは述べてきましたが、もう一つ重要なことは患者さんの主要臓器の機能予備力を的確に評価することです。当然血液検査を含めた各種検査で評価するのですが、右に示す日常生活の活動度(Performance Status : PS)も大きな判断基準となっています。例えば肺に基礎疾患があって普段から息切れのためにPS3程度の活動度の患者さんは手術を行うことでPS4となってしまう可能性が高くなります。

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